眠りの変化は心のSOS? 公認心理師が解説する睡眠の質とメンタルの関係|受診目安と治験という選択肢

睡眠の質とメンタルの関係

「最近、眠りが浅い気がする」
「夜中に何度も目が覚める」
「寝ても疲れが取れない」

このような睡眠の変化を感じている人は少なくありません。

睡眠は、体の疲れを回復させるだけでなく、心の健康とも深く関係しています。睡眠の質が低下すると、日中の眠気や疲労だけでなく、情緒の不安定さや集中力の低下など、心身にさまざまな影響が現れることがあります。

また、睡眠の問題はうつ病などの精神疾患の初期症状として現れることもあり、逆に睡眠の問題そのものが精神的な不調のリスクを高めることも報告されています。

この記事では

  • 眠りの変化から考えられる心の状態
  • 睡眠の質が低下する仕組み
  • 医療機関を受診するタイミング
  • 新しい治療法の研究(治験)

について、公認心理師の視点も交えて解説します。

眠りの変化から考える心の状態—睡眠の質が下がるときに起きていること

睡眠とメンタルは密接に関係しています。

強いストレスや不安、気分の落ち込みが続くと、自律神経のバランスが乱れ、眠りに影響が出ることがあります。

例えば、次のような症状です。

  • なかなか眠れない
  • 夜中に何度も目が覚める
  • 朝早く目が覚める
  • 寝ても疲れが取れない

このような状態は、睡眠の質が低下しているサインかもしれません。

睡眠の問題が長く続くと、心身の不調だけでなく、生活習慣病や精神疾患のリスクが高まることも報告されています。

眠りの変化は心のストレスサイン

心理支援の現場では、相談のきっかけとして

  • 眠れなくなった
  • 夜中に目が覚める
  • 朝早く起きてしまう

といった「睡眠の変化」があげられることは少なくありません。

心理的なストレスが続くと、脳は緊張状態になり、リラックスが難しくなります。その結果、入眠が難しくなったり、眠りが浅くなったりすることがあります。

睡眠の変化は、心の不調の入り口として現れることもあるため、早めに気づくことが重要です。

「睡眠の質」とは何か

睡眠の質とは、単に睡眠時間の長さだけで評価されるものではありません。
熟睡感や途中で目が覚めないこと、朝の目覚めの良さなど、主観的な回復感も含めて評価されます。

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、良い睡眠には

  • 睡眠時間(量)
  • 睡眠休養感(睡眠で休養がとれている感覚)

の両方が重要であるとされています。 

睡眠時間には個人差がありますが、日常的に量・質ともに十分な睡眠が確保することが心身の健康につながるとされています。以下を参考に、ご自身の睡眠についてチェックしてみてください。

質の良い睡眠の目安

  • 眠りにつくまで時間がかからない
  • 夜中に目が覚めない
  • 熟睡感がある
  • 朝すっきり起きられる
  • 日中の眠気が少ない

「睡眠の質」が低下しているサイン

「睡眠の質」が低下すると、自分でも気が付かないうちに、心身の状態が悪くなることがあります。次のような症状が現れたときは、早めに気付き、原因を取り除いたり、意識して休むなどの対処が必要です。

夜中に何度も目が覚める

途中で目が覚める状態は「中途覚醒」と呼ばれます。
ストレスや不安、生活リズムの乱れなどが背景にあることがあります。

朝早く目が覚める

予定より早く目が覚めてしまい、その後眠れなくなる状態を「早朝覚醒」といいます。

早朝覚醒は、うつ状態でみられることがあります。

寝ても疲れが取れない

睡眠時間が十分でも、起きたときに回復感がない場合、深い睡眠が不足している可能性があります。

このような状態は「睡眠休養感の低下」と呼ばれ、健康状態の悪化と関連することが報告されています。

「心の不調」で眠れなくなる理由

睡眠の質が低下して、心に不調を感じる時、体にはどのようなことが起こっているのでしょうか。

ストレスで交感神経が優位になる

ストレスを感じると、身体は「戦う・逃げる」ための状態になり、交感神経が優位になります。この状態ではリラックスが難しく、眠りに入りにくくなります。

セロトニンとメラトニン

メラトニンは「睡眠ホルモン」とも呼ばれます。

夜になると脳の松果体(しょうかたい)から分泌され、自然な眠りへと導く大切なホルモンです。

このメラトニンの材料になるのが、神経伝達物質のセロトニンです。セロトニンは日中、太陽の光を浴びたり体を動かしたりすることで分泌が促され、気分を安定させる働きをします。そして夜になると、そのセロトニンが体内でメラトニンへと変換されます。

つまり、日中にセロトニンがしっかり作られることで、夜のメラトニン分泌がスムーズになり、質のよい睡眠につながるのです

ストレスや生活リズムの乱れによってセロトニンの働きが低下すると、メラトニン分泌にも影響が出て、眠りの質が低下します。

体内時計の乱れ

人間の睡眠は、体内時計(概日リズム)によってコントロールされています。

日中に十分な日光を浴びない生活や、夜遅くまでスマートフォンやパソコンの画面を見続ける習慣などによって、この体内時計のリズムが乱れることがあります。特に夜間の強い光は、睡眠に関わるホルモン(メラトニン)の分泌を遅らせる可能性があり、結果として眠る時間が後ろにずれてしまうことがあります。

睡眠の質を整える生活習慣

「睡眠の質」の低下を感じるとき、まず最初に試していただきたいのが、生活習慣や就寝環境の見直しです。
睡眠は、日中の過ごし方や夜の環境によって大きく左右されます。日々の習慣を少し整えるだけでも、眠りの状態が改善することがあります。

例えば、次のような習慣です。

朝日を浴びる

朝の光を浴びることで体内時計がリセットされ、夜の眠りが整いやすくなります。

人の体内時計は約24時間よりやや長い周期を持つため、毎朝の光刺激によってリズムが調整されています。特に朝に光を浴びると、夜になって睡眠ホルモン(メラトニン)が分泌されやすい状態を整えると考えられています。

適度な運動

日中、ウォーキングなどの中程度の運動は、睡眠の質の改善につながるとされています。

身体活動は体温リズムや自律神経の働きに影響し、夜の自然な眠気を促す要因になると考えられています。心地よい疲労感が、寝つきの改善や睡眠の安定につながることが報告されていますので、ぜひ意識して体を動かしてみてください。

就寝前のスマホを控える

スマートフォンのブルーライトは、睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌を抑えてしまうことがあります。

メラトニンは、夜になって周囲が暗くなることで分泌が促されるホルモンですが、夜間に強い光を浴びると分泌が遅れる可能性があります。

そのため、就寝前にスマートフォンやタブレットなどの画面を長時間見ることは、入眠を妨げる要因になることがあります。

カフェインを控える

カフェインには覚醒作用があり、就寝前の摂取は入眠を妨げる可能性があります。

カフェインは脳の覚醒を促す働きを持ち、その影響は数時間持続するとされています。夕方以降にコーヒーやエナジードリンクなどを摂取すると、寝つきの悪さや睡眠の浅さにつながる場合があるため、就寝前の摂取は控えたほうがよいでしょう。

入浴でリラックス

就寝1〜2時間前の入浴は、体温変化を促し入眠を助けることがあります。人の体温(深部体温)は1日約24時間のリズムで変化しており、日中は高く、夜の睡眠に向かう時間帯に低下していきます。

入浴によって体が温まると、入浴後に手足の血管が広がり、体の熱が外に放散されやすくなります。その結果、深部体温が下がりはじめ、眠りに入りやすい状態が整うと考えられています。

睡眠の変化セルフチェック

次の項目に当てはまる場合、睡眠の質が低下している可能性があります。

眠るまで30分以上かかる
□ 夜中に何度も目が覚める
□ 朝早く目が覚める
□ 熟睡感がない
□ 日中の眠気が強い

どのタイミングで受診を考えるべき?

睡眠は、生活習慣や環境を整えることが第一ですが、それでも改善しない場合は医療機関で相談することがすすめられます。

  • 不眠が2週間以上続く
  • 日中の生活に支障がある
  • 気分の落ち込みや不安が強い

睡眠の問題が長く続く場合、背景に睡眠障害や精神疾患が隠れている可能性もあります。

医療機関で相談できること

不眠症状で医療機関を受診した場合、次のような治療が行われます。

  • 睡眠状態の評価
  • メンタル状態の確認
  • 生活習慣の改善
  • 薬物療法
  • 心理療法

睡眠の問題は、生活習慣の調整や心理療法などによって改善することも多くありますが、症状や状態によって、お薬が処方される場合もあります。

新しい治療法の研究(治験)が進められています

現在、精神疾患や睡眠障害の分野では、新しい治療法の研究が進められています。

治験とは、新しい薬や治療法の効果や安全性を確認するために行われる臨床研究です。

精神科領域でも、お薬や医療機器など、多くの研究が進められています。

治験という選択肢

治験に参加することには、次のような意義があります。

  • 新しい治療法にアクセスできる可能性
  • 医師による健康管理
  • 医療研究への貢献

すべての人が対象になるわけではありませんが、治療の選択肢の一つとして知っておくことも大切です。

まとめ

眠りの変化は、心の不調のサインとして現れることがあります。

  • 眠れない
  • 夜中に目が覚める
  • 熟睡感がない

といった状態が続く場合は、早めに専門家へ相談することが大切です。

また現在は、新しい治療法の研究も進められており、治験という形で研究に参加できる可能性もあります。

睡眠の変化に気づいたときは、「ただの寝不足」と放置せず、心と体のサインとして向き合うことが大切です。

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