なぜ認知症の初期に不眠を放置してはいけない?同時ケアの重要性と改善法

【医師監修】認知症の初期に不眠を放置すると、物忘れや不安が重なり深刻な悪循環が生じる可能性があります。本記事では同時ケアの重要性と具体的な改善策を解説し、受診のメリットや家族のサポート例も紹介します。
「60代になってから物忘れが増えた。そのうえ夜も眠れない…」と悩んでいませんか?
「認知症かもしれない」という不安が強まると、夜中に考え込んでさらに眠れない状態に陥りがちです。日中は集中力や判断力が落ち、物忘れが多いと感じるたびに「やはり認知症かもしれない…」と不安が高まっていく悪循環が生まれます。
本記事では、認知症の初期段階と不眠を同時にケアすることの重要性について解説します。放置した場合のリスクや具体的な改善方法を知り、早めの行動につなげてください。
なぜ不眠を放置してはいけないのか
不眠が続くと認知機能の衰えを助長する可能性
深い睡眠は、脳の老廃物(アミロイドβなど)を排出し、記憶の整理や定着を促します。不眠が続くとこの働きが妨げられ、認知機能が低下するリスクが高まります。
認知症初期では特に、睡眠不足が進行リスクに拍車をかける可能性があるため注意が必要です。
不安と睡眠不足の悪循環
「認知症かもしれない…」という不安は、夜になると強まりやすく、寝つきの悪さにつながります。
睡眠不足で日中ぼんやりすると、さらに物忘れが気になり、不安が増すという悪循環に陥ります。
同時ケアが重要な理由
認知症初期は早期対策がカギ
認知症は早期に対応すれば、進行を遅らせ生活の質を保てる可能性があります。不眠があると脳が十分に休めず、症状が悪化するリスクが高まります。
不眠の改善がメンタル面を安定させる
質の良い睡眠は、不安やイライラを軽減し、精神的な安定に役立ちます。
気持ちに余裕が生まれれば、「本当に認知症かもしれない」といった不安を冷静に受け止められるようになります。
セルフチェック:認知症初期と不眠のサイン
物忘れ・集中力低下のサイン
- 最近の会話や出来事をよく忘れる
- 同じ話題を何度も繰り返す
- 似たようなミスを頻繁にする
- 予定や約束を忘れることが増えた
不眠のサイン
- 布団に入っても30分以上眠れない日が続く
- 夜中や早朝に何度も目が覚める
- 日中の強い眠気やだるさがある
- 寝ても疲れが取れない
放置しないための目安
物忘れと不眠が同時に起こっている場合は要注意。
家族から見ても「様子がおかしい」「繰り返しが増えた」と感じるなら、早めの受診がおすすめです。
同時ケアの具体的な方法
生活リズムの整え方
- 朝起きたら太陽光を浴びる
- 日中に軽い運動(ウォーキング・家事)をする
- カフェインやアルコールは夕方以降避ける
- 夕食は就寝の2〜3時間前までに済ませる
夜の不安対策
- 寝る前はスマホ・テレビの画面を控える
- ストレッチ・深呼吸・音楽などでリラックス
- 不安はメモに書き出して頭を整理
- 照明をやや暗くして穏やかな空間にする
家族や周囲のサポート
- 夜間の見守りや声かけで安心感を与える
- 日中の活動(散歩・趣味)に一緒に参加する
- 地域の介護サービスやデイケアの活用を検討する
- 夕方以降の刺激を抑える工夫をする
受診と専門家の活用
どの診療科を選ぶか
- 認知症の疑い:認知症外来・神経内科・精神科
- 不眠が中心の場合:睡眠外来・精神科・心療内科
- 迷ったとき:まずはかかりつけ医に相談し紹介状をもらう
早めの受診で得られるメリット
- 症状の原因が明確になる
- 進行度に応じた治療や支援が受けられる
- 不眠への対応(カウンセリングや薬など)が可能
- 家族へのアドバイスや介護サポートの紹介がある
まとめ:放置せず、早めの同時ケアを
認知症の初期と不眠が重なると、不安と睡眠不足が相乗的に悪化し、日中の行動や判断力に影響します。
しかし、生活改善や専門相談を早めに取り入れることで、心身の安定と進行リスクの軽減が期待できます。
まずはセルフチェックや生活リズムの見直しから始め、必要に応じて受診を検討してください。

監修者
東京センタークリニック 院長 長嶋 浩貴
Hirotaka Nagashima
千葉大学医学部卒業後、東京女子医科大学循環器内科に入局。ハーバード大学医学部での研究経験を経て、東京女子医科大学で血管研究室長を歴任。その後、350以上の治験に携わり、2017年には日本初の分散型治験を実施。現在は東京センタークリニック院長として、認知症を含む多くの臨床研究に取り組む。
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