60代で少し前のことを忘れるのは認知症? 加齢との違いを知るためのセルフチェック

【医師監修】60代になって「少し前のことが思い出せない」と感じるのは、加齢による物忘れか、それとも認知症の初期症状なのでしょうか。本記事では、セルフチェックの方法やMCIの対策、専門医の受診目安などを詳しく解説します。
目次
はじめに
「最近、物忘れがひどい」と感じることはありませんか。60代を迎えると、少し前に起こった出来事や会話の内容が思い出せず、「あれ? 何をしようとしていたんだっけ…」と戸惑う場面が増える方も多いようです。
本記事では、加齢による物忘れと認知症の違い、自分でできるセルフチェック、そして専門医への受診の目安などを紹介します。この記事を読むことで、今のご自身の状態を客観的に把握し、必要な対策を検討するきっかけにしていただければ幸いです。
記事全体の概要
- 加齢による物忘れの特徴
- 認知症の初期症状と見分けるポイント
- MCI(認知症の予備軍)の概要と進行を遅らせるための対策
- 受診のタイミングや専門医の選び方
- 物忘れを防ぐ習慣とQ&A
60代になると物忘れが増える? その背景
加齢による脳機能の変化
60代になると、脳の神経細胞の減少や伝達速度の低下などの老化現象が顕著になりやすくなります。その結果、「少し前のことを忘れる」頻度が増え、物忘れを強く実感するようになるのです。
ライフスタイル・ストレス要因
定年退職や生活リズムの変化などにより、刺激やメリハリが少なくなる一方、睡眠不足やストレスが続くと記憶力がさらに低下しやすくなります。こうした環境の変化が、物忘れの増加につながることもあります。
認知症なのか単なる物忘れなのか? 見分けるチェックポイント
加齢による物忘れの特徴
- ヒントがあれば思い出せる
- 重要な出来事は覚えているが、細部を忘れやすい
- 一度思い出せなくても、しばらくすれば自然と思い出す
認知症の初期症状の例
- ヒントがあっても思い出せない
- 日常生活や家事の手順がスムーズにいかなくなる
- 昔の出来事は覚えていても、最近あったことをすぐに忘れてしまう
簡易セルフチェックリスト
- 同じ質問や話を繰り返すことが多くなった
- 以前にはなかった物の置き忘れが増えた
- 日付や場所を取り違える頻度が上がった
- 会話中に言葉が出てこなくなることが以前より増えた
こうしたサインが目立つ場合は、専門医に相談して早めに原因を明らかにすると安心です。
物忘れがひどいと感じたら:いつ病院に行けばいい?
受診の目安
- 物忘れの頻度が明らかに増え、日常生活に支障を感じ始めた
- 家族や友人から「同じ話を何度もしているね」と指摘されることが増えた
自分では気づきにくい変化を、周囲の人からの指摘で知るケースも多いものです。不安に感じたら、かかりつけ医などで相談してみましょう。
どの科を受診すればいいのか
まずはかかりつけ医へ行き、症状を詳しく伝えましょう。必要に応じて神経内科や精神科、認知症外来などを紹介してもらい、検査を受けることで、認知症かどうか、あるいはMCI(認知症の予備軍)かどうかを判断できる可能性があります。
受診までの準備
- 具体的な症状や置き忘れの頻度を記録しておく
- いつ頃から気になり始めたのか、生活リズムやストレス状況なども整理
- 家族や周囲が見た変化や指摘事項もメモしておく
MCIとは? 進行を遅らせるためにできること
兆候や症状の例
- 以前より物忘れが増えたと自覚している
- 集中力や判断力が落ち、些細なミスが目立つ
- 「頭がぼんやりする」「スムーズに動けない」と感じることが増えた
早期対策の重要性
MCIの段階で生活習慣を整え、医療機関のサポートを受けることで、認知症への進行を遅らせる可能性があります。運動・食事・睡眠など、基本的な健康管理を見直すことが第一歩です。
60代からでも始められる! 日常生活でできる物忘れ対策・予防策
運動
ウォーキングなどの軽い有酸素運動を定期的に取り入れると、脳の血流が改善され、認知機能をサポートする可能性があります。無理のない範囲で続けることが大切です。
食事
野菜や魚、良質なタンパク質をバランスよく摂ることが推奨されます。糖分や塩分は控えめにして、栄養バランスを意識してください。
睡眠
深い眠り(ノンレム睡眠)は記憶の定着や脳の回復に重要です。就寝前のスマートフォン使用を控えるなど、質の良い睡眠を得られる工夫をしましょう。
脳トレ・会話
読書やパズル、新しい趣味など脳に刺激を与える活動を行いましょう。また、人とのコミュニケーションを積極的に行うことも、思考力や言語力の維持につながるとされています。
よくあるQ&A
家族に物忘れを指摘されるたびに落ち込みます…
物忘れは加齢による変化も大きいです。「同じ話をしているよ」と指摘されたときは、具体的な場面を聞き、セルフチェックを行ってみましょう。不安があれば早めに専門医へ相談を。
サプリメントを使えば物忘れが改善しますか?
. 一部の成分が脳機能に好影響をもたらす可能性がありますが、断定的な効果をうたうものには注意が必要です。医師や薬剤師に相談してから使うことをおすすめします。
物忘れを認めたくなくて、受診に踏み切れません…
不安な気持ちは自然なことです。ただ、早めに相談することで、必要なケアや対策がとりやすくなり、将来への心配を軽減できます
まとめ
- 60代での物忘れは加齢によるものが多いが、認知症やMCIの可能性もある
- セルフチェックや周囲の声を参考に、必要に応じて受診を検討する
- 生活習慣の改善(運動・睡眠・食事・脳トレ)で進行を遅らせることも可能
適切な対処と習慣改善によって、認知機能の低下を遅らせ、これからの生活をより安心して楽しむことができるはずです。

監修者
東京センタークリニック 院長 長嶋 浩貴
Hirotaka Nagashima
千葉大学医学部卒業後、東京女子医科大学循環器内科に入局。ハーバード大学医学部での研究経験を経て、東京女子医科大学で血管研究室長を歴任。その後、350以上の治験に携わり、2017年には日本初の分散型治験を実施。現在は東京センタークリニック院長として、認知症を含む多くの臨床研究に取り組む。
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